3.伝統球団にもマスコットが登場〜発芽期・1985-1993〜
球団マスコット物語は、各マスコットさんの正確なデビュー日などの考察を交えつつ、デビュー時のエピソードを振り返る連載企画です。
1985年から1993年ごろまでの出来事をピックアップ。巨人・阪神におけるマスコット誕生と、ホークスの福岡移転、阪急のオリックスへの売却と神戸移転、ロッテの千葉移転と横浜の球団名変更を取り上げます。
1990年前後におけるマスコットのデビューは、伝統球団および転機を迎えた球団によるものがほとんどだった。
伝統球団におけるマスコットのデビュー
トラッキーの登場
ブレービーの活躍に触発されたか、同じ関西に拠点を置く阪神タイガースでもマスコットの導入が検討された。
トラッキーの誕生は、1985年に登場した虎のキャラクターに由来する。前年に更新された甲子園球場のフルカラー電光掲示板を活用するべく、ビジョン限定で使われたキャラクターであった。
画面上のキャラクターは、1987年7月18日に公募で「トラッキー」と命名された。「トラ」と「ラッキー」を合成し、「To Lucky(幸運に向かって)」という意味が込められた(ベースボール・マガジン社1987)。7月の命名時点ではグラウンドに登場していなかったようだが、11月のファン感謝祭ではその姿が確認できることから(阪神タイガース1988)、1987年中にグラウンドにデビューしたことが窺える。
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ジャビットの登場
阪神から遅れること5年、ジャイアンツでも新マスコットマークの公募が行われた。1991年10月30日に33,021点の作品から美術デザイナー・沢田隆夫さんのデザインが採用されることが発表された。翌1992年3月5日には公募73,643通のうち圧倒的トップの4,112通を集めた「ジャビット」と名前が決定。こちらはイラストの発表からグラウンドの登場までが早く、1992年3月21日に東京ドームで行われたオープン戦でグラウンドに初登場した。背番号333と555の2体で活動する現在の姿は、この時点ですでに確立していたようだ。
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転機に合わせたデビュー
球マスの祖・ブレービーは神戸のネッピーに
ブレービーは、1980年のデビューから大人気のマスコットとなり、1988年4月8日には、ジュニアにあたる勇太くんが誕生し、土休日のゲームに登場した。しかし、同年オフにオリエント・リース(オリックス)に球団が売却。ブレービーは球団売却後も「オリックス・ブレーブス」のマスコットとして活動を続けたが、勇太くんは、わずか1年で出番を失った。
2年後の1990年10月5日には、神戸移転に伴う新球団「オリックス・ブルーウェーブ」が発表された。同時にマスコットの「ネッピー」が登場、ブレービーは10月14日の試合をもって活動を終了した。ネッピーは、ブレービー同様に島野修さんがスーツアクターを務める形で、1991年3月17日のオープン戦でデビューした。
ちなみに神戸移転後には、4人組の海賊「ブルーパイレーツ」というマスコットも活動していた。これまでの各種文献では、移転した1991年にデビューしたと書かれていることが多いが、正確には1992年の開幕に合わせて登場したようだ(オリックス野球クラブ1992)。彼らの役割は、球場前でのウェルカム、ゲーム中のスタンド応援、球場のパトロール、ゴミ拾い、音楽に合わせたパフォーマンスなどだった。
ホークファミリーの誕生と福岡ドームへの移転
1988年オフに南海電気鉄道から球団を買収したダイエーは、福岡移転に合わせたリブランディングを敢行する。
1988年12月12日に、1984年ロサンゼルス五輪の公式キャラクターで、アニメ化もされ日本で大人気だった「イーグル・サム」のデザイナー、ロバート・ムーアが手がげた新ペットマークを発表する。
(余談だが、東北楽天のマスコット・スイッチ(オウギワシ)は、「憧れのワシ」はイーグル・サムであると2016年デビュー時の報道発表で答えている。)
ここでデザインされた4羽の鷹は、ホーク・ファミリーとして、ホーマーホーク(パパ)・パピーホーク(ママ)・ハーウィーホーク(長男)・ヘーゼルホーク(長女)と名付けられた。 ホークスのファンブックに掲載されたムーア氏へのインタビューによれば、「家族の人たちを野球にひきつけよう」というテーマでのデザインであったという。
しかし、4年後にはマスコットさんの完全な交代が決まった。1992年10月1日の平和台球場におけるシーズン最終戦で4マスコットが引退。福岡ドームに移転するタイミングに合わせたもので、球団は、新たに再開発された「ホークスタウン」に住む新しいマスコットを必要としていた。後継のマスコットには、ホーマーの末弟にあたるホークスタウンの4番バッター「ハリーホーク」や、ガールフレンドの「ハニーホーク」、ハリーの叔父でホークスタウンの市長を務める「ホンキーホーク」などの8マスコットが登場して今に至る。
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千葉移転でロッテのシンボルは鴎に
1992年にロッテオリオンズは、千葉県に移転した。ペットマークに鴎を採用し、同年から鴎のマスコットが球場に登場した。公募により、男の子が「マーくん」、1993年デビューの女の子が「リーンちゃん」と名付けられた。当時は現在と全く異なる姿であり、2023年のマーくん2000試合出場時に登場した「初代カモメ」の姿が当時の「マーくん」である。
なお、2000試合セレモニー開催のお知らせにおいて、命名されたのは1993年7月4日とされているが、7月1日ごろに発売された「週刊ベースボール1993年7月12日号」では、すでに名前が掲載されている。正確にはマーくんリーンちゃんとしてお披露目されたのが7月4日で、それ以前に命名自体は発表されているようだった。
公募していた球団マスコットの愛称がついに決まりました。男の子が「マーくん」、女の子が「リーンちゃん」です。なお、7月4日の試合では、抽選で100名の方に、このマー君かリーンちゃんのぬいぐるみ(カーアクセサリー)がプレゼントされます。
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ホエールズはベイスターズに
1992年10月8日、横浜大洋ホエールズは、球団名を「横浜ベイスターズ」へと改称することを発表した。大洋漁業(現・マルハニチロ・26年3月からUmios)のマルハへの改称とほぼ同じタイミングでのことだった。
1992年11月11日、新球団名の正式発表と同時に新マスコットを発表し名前の公募を開始。12月18日に14,000通、1,200種の応募から「ホッシー」に決定されたと発表された。「ホッシー」は1993年の横浜ベイスターズ初年度からグラウンドで活躍。同年のファン感謝デーでは双子の子供がお披露目された。双子は翌1994年2月21日に子供の名前を「ホッシーゾ」・「ホッシーナ」と発表。ホッシーから1年遅れる形でベイスターズの仲間に加わった。
まとめ年表
- 1985.4.16? 阪神・トラッキーが電光掲示板に登場
- 1987.7.18 阪神・トラッキーが公募により命名。同年中にはグラウンドデビュー
- 1988.4.8 阪急・勇太くん誕生。
- 1988.10.19 阪急・オリエントリースに球団売却を発表
- 1988.10.23 阪急・勇太くん最後の試合出演?
- 1988.12.12 ダイエー・「イーグル・サム」デザイナー作成のマスコット発表
- 1989.1.19 ダイエー・選手団が福岡にチャーター機で登場。ホーマーホークら4マスコットも登場。
- 1990.10.5 オリックス・神戸移転に伴う新球団名発表に合わせて「ネッピー」を発表
- 1990.10.14 オリックス・ブレービーがブレーブス最後の試合に出演
- 1991.3.17 オリックス・ネッピーがオープン戦でデビュー
- 1991.10.30 巨人・新マスコットマークに美術デザイナー・沢田隆夫さんのデザインを採用
- 1992.3.5 巨人・新マスコットを「ジャビット」と命名
- 1992.3.21 巨人・ジャビットがオープン戦でデビュー
- 1992.4.4 ロッテ・千葉移転初戦。1992シーズンに鴎のマスコットが登場。
- 1992.4.11? オリックス・ブルーパイレーツがデビュー
- 1992.10.1 ダイエー・平和台最終戦でホーマーホークなど4マスコットが引退
- 1992.11.11 横浜・新球団名の正式発表と同時に新マスコットを発表
- 1992.12.18 横浜・公募していた新マスコットの名前を「ホッシー」と発表。
- 1993.6月下旬 ロッテ・マーくん・リーンちゃんが命名(お披露目は7/4)
- 1993.11.23 横浜・ホッシーの子供に当たる双子を発表
- 1994.2.21 横浜・公募していたホッシーの子供の名前をホッシーゾ・ホッシーナと発表
シリーズ
1. 球団マスコットが日本に登場するまで〜草創期・1966-1979〜
2.グラウンドにマスコットが登場〜黎明期・1979-1984〜
3.伝統球団にもマスコットが登場〜発芽期・1985-1993〜
4.12球団のマスコットが出揃う〜成長期・1994-1997〜
5.各球団によるファンサービスの拡大〜拡大期・1998-2006〜
6.第一次マスコット”バズり”時代〜革命期・2007-2012〜
7.球団マスコットは新しい時代へ~発展期・2013-~
参考文献
- オリックス野球クラブ 1992.ブルーサンダー 26:11 .(1992年5月号)
- 綱島理友 監修 2009.日本のプロ球技チームのマスコットが大集合!スポーツ・マスコット図鑑.PHP研究所 :8-47.
- 阪神タイガース 1988.月刊タイガース 新年号 119:49.
- ベースボール・マガジン社1987. 週刊ベースボール42(37):76(1987年8月24日号)
- ベースボール・マガジン社1993. 週刊ベースボール48(29):80(1993年7月12日号)
- ベースボール・マガジン社 2008.週刊ベースボール 63(43):11-33.(2008年9月22日号【特集】かわいくって、いやされる マスコット大集合!)
- ベースボール・マガジン社 2009.週刊ベースボール 64(35):4-33.(2009年8月17日号【特集】みんなの人気者 大好き! マスコット)
- ベースボール・マガジン社 2021.週刊ベースボール 76(38):3-42.(2021年8月16日&23日合併号【特集】いつもそばにはマスコット 球界の盛り上げ役 マスコット大集合!!)
- ベースボール・マガジン社 2022.週刊ベースボール77(40):3-49.(2022年8月29日号【特集】夏休み特別企画 もっともっとマスコット!!)
- 読売新聞 1988.12.13 朝刊 19頁.新生ホークスにマスコット 「イーグル・サム」の“弟”です.



















